ハンコック
無頓着でルーズなゆえに、正義を為しても副作用が大きく人から嫌われてしまうスーパーヒーローがいかにして大衆の好意を獲得していくか、についてのコメディだと見る前は思っていた。なんかすごく面白くなりそうじゃない?ところが見てみると大外れだった。正義を為す時に不必要に物を壊すのは無頓着だからではなくて、嫌われるゆえの投げやりさのせいであった。つまり物を壊すから嫌われるのじゃなくて、嫌われるから物を壊すと言う。もっと言うと、ボクちゃん愛されたいの、って言う話だった。3歳児の父親としてはその心の動きはよーくわかるよ。
で、ボクちゃん愛されたいの、ってのは3歳児であれば極自然な心のありようだと思うのだけれど、大人が(とか大きな国とかが)これを言い出すのを見るのは気色が悪い。今風の言葉で言えばキモイ。というわけで、最終的には「愛されなくてもボクちゃんみんなに尽くす事にしたよ」で落ちがつくのだ。これはまあ常道。
で、この映画が常道と違うのは、そこへ至るまでのプロセスであって、シャーリーズ・セロンが途中であんな振舞いに至った時には、「後半トンデモな展開になる」と聞いていたってびっくりする。で、なんだかその世界の仕組みがよく飲み込めないうちに、とっても小物の敵が現れて、なのに轟々とひどい修羅場が展開するのであるよ。口ポカン。シャーリーズ・セロンというと珍作「イーオン・フラックス」があったけど、あれとちょっと似た感覚を覚える。キテレツかつ時間軸の長い愛憎話が好きなのか?>セロン
実は私は「イーオン・フラックス」はその口ポカンな展開ゆえに大好きな作品なのだけど、この「ハンコック」にもそういうキテレツ好きを刺激する要素があるのはあるのだ。でもね、結論を言うと私は今作はダメ。何が違うかと言うと、手ブレブレブレのドキュメンタリータッチのカメラワーク。酔うんだよ。この作品で手ブレカメラを使う必然性は1ミリもないわけで、わたしゃ酔い損だ。で、よく見ると今作の監督はピーター・バーグ。この人は「キングダム」を撮った人で、あれも30分くらいで気持ち悪くなって画面が見ていられなくなったんだよね。手ブレを使ってもお客を酔わせないポール・グリーングラスを見習うべし。彼のは芸。こちらはバカの一つ覚えといわれてもしかたないよ。
御裁断は(最高☆5つ)
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