ジャンパー
およそ青春というものは、家庭にゆがみを感じて家出して、イヤな大人にいじめられながらも恋人と友人を得た後、再び家庭との関係を改めて取り結ぶプロセスの事である。何が言いたいかというと、ジャンパーは正しく青春映画なのである、という事だ。だからヒロイン役は、青春ドラマの大ヒット「OC」のレイチェル・ビルソンであり、ジャンパー世界のルールを教える役割は老人ではなく同世代のジェイミー・ベルが担い、かつ物語上全く必要のない母親にダイアン・レインを配しているのである。してみると、主役がヘイデン・クリステンセンであるところだけが解せないのであるけれども、まあこれは商売上の要請と言う事にしておく。いや、これが15、6歳の少年なんだと思えば、劇中彼が見せる無思慮な行動の数々も理解できようという。どうでもいいが、サミュエル・L・ジャクソンとは因縁の対決である。
主人公が本来社会に違和感を持つ思春期の少年であるという点については、ジャンプ先として図書館が別格の位置づけを与えられている事からもわかる。親を含めた周りの人間が急に愚かに見え始めた少年にとって、図書館は新しいねぐらであり、砦であり、武器庫ではないか。そうでしょう?
娯楽映画として見たときの、本作の一番の売りはジャンプの視覚効果の気持ちよさではないかと思う。エジプトに行ったり東京に行ったりというのは、お客の側からして別にどうでもいいようなもので、単にジャンプの方便としてあるだけだ。でも、ジャンプも頻繁にするとすぐに飽きられる訳で、ジャンプしなくなったらお話しにならないのだから、90分程度の今時珍しく短い上映時間にまとめたのは正解だったと言える。
御裁断は(最高☆5つ)
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