ドラゴン・キングダム
何か一つのものに偏愛を示す姿は、それがどんなものであれ好もしいものだ。という事で、私はこの欠点だらけの作品を嫌いになる事ができないでいる。
もちろんこの映画が偏愛する対象はカンフーだ。カンフー映画のポスターがべたべた貼られている主人公の部屋や、タイトルクレジットのデザインなどあざといばかりだけれども、これは決して表面的な心の入っていないものではないのだ。なんとなれば、主役二人、最高のカンフースターであるところのジャッキー・チェンとリー・リンチェイが劇中受けている扱いを見れば、作り手の敬意というのが伝わってくるのだ。ジャッキーがなぜ現代のシーンに出てくるのかがちゃんと説明されるし、リーリンチェイに至っては最後の決戦で英雄的な自己犠牲というおいしい役割を振られ、にも関わらず観客はリーリンチェイの喪失から来るイヤな気持ちを感じないで済むような仕掛けがされている。日本人なら常識のその仕掛けを知らないアメリカ人のために、ちゃんと前半で伏線を引いているという丁寧な仕事ぶり。後から思い返すと、それ以外にもリーリンチェイの振舞いに伏線があると言う。という事で、二大スターが出てくるところにはもう細心の注意が払われている。好ましくなかろうはずがない。さらにコリン・チョウまで出ているのだよ。
一方、それ以外はもうグダグダといっても良い。特にストーリーのボンクラ加減ったら。アメリカ人のカンフーオタク少年が中国にタイムスリップして如意棒を孫悟空に返しに行く、なんて良い大人が聞いたら悲しくなってしまう。折角のスター共演がなあ。それから、この狂言回しの少年への作り手の淡泊さったらない。なんせ見せ場が何もない。そこまであからさまに冷淡にしなくったって。本来、お客はここを支点にしてお話の中に入っていくところだから、そこが描けてないってのは、はいい加減な基礎の上に立った建物みたいなものなのだよ。
という事で、全体としては決して誉められた出来ではないこの作品、それでもやっぱり私は好きなんだよなあ。
ところで、孫悟空はリーリンチェイ。これがはまり役で。孫悟空ってのは、能天気な山猿の暴れん坊なわけで、そう言われてみるとリーリンチェイってのは無邪気な顔させると天性の魅力があるからピッタリなんだよね。ダニー・ザ・ドッグの幸せな時の顔で敵と戦うわけよ。
御裁断は(最高☆5つ)
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