トロピック・サンダー/史上最低の作戦
ベン・スティラーとジャック・ブラックが出ていると言う事で、くだらないギャグが続く緩いコメディかと思っていたら、意外と「演じる事とは何か」とか「アイデンティティーとは何か」とかの哲学的なテーマが見え隠れする真面目な作品で、さらに映画を撮る事への愛にも溢れていて、素晴らしかった。いやあくまで形式は緩いコメディなんだけど。
面白かったのは、アクション俳優から演技派への脱却に悩むベン・スティラーが、やり過ぎ演技派のロバート・ダウニー・Jrから「肩の力を抜けないのが問題だ」とのアドバイスをもらって、そうはいってもあくまで臭い演技が続くというシチュエーションがあって、一方ベン・スティラーの出番の多い前半は「凡庸な作品だなあ」と思っていたのが、途中から出番がグッと減るに従ってドンドン面白くなっていったと言う。つまりまさにダウニー・Jrの言を体現したような作品であると言う。
こんな作品だから、ダウニー・Jrの独壇場になりそうなものだが(ジャック・ブラックは全く精彩を欠いていた)、そこに綺羅星のごとく現れるのがトムちんとマシュー・マコナヘー、通称へーだ。トムちんはマグノリアの時のメソッドを微妙にずらして使って場を完全にさらってしまう訳だが、へーが得意のアホ面でお話に絡んでくる間合いが絶妙で素晴らしい。何でも聞くところによると、もともとオーウェン・ウィルソンに当て書きされた役だったらしいが、私的には同じアホ面でも人の良さがにじみ出るへーの方があってたと思う。さらに、ニック・ノルティまで出ているから、この作品は贅沢だ。
御裁断は(最高☆5つ)
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