バンテージ・ポイント
同じ事象が、見る人の立場によって全く異なるものに見える、という今ではごく当たり前の認識に私が初めて気がついたのが10代も終わりの頃。あのときは、とってもびっくりしたものだった。つらつら思えば、動物の事を研究して食っている今でもその衝撃の影響下にあるような気がする。
で、今作は、そういう一つの事件をいくつもの視点から描いていくという、いわゆる「羅生門」スタイルの映画である。で、娯楽作品としての今作が良くできているのは、ある視点での物語がクライマックスを迎えた瞬間に、次の視点に切り替わる、というか巻き戻ることだ。キュルキュル。これを食らった観客は「おい、ここで宙ぶらりんにするな!」と叫びだしたくなる。つまり本作は一人クリフハンガー映画なのだな。一本で何度もお得。いや、実際クリフハンガーされた直後に、すぐに次の話を見せてもらえるというのは大変心地の良いもので、こういうのは「24」とかうっかり全話DVDで借りてしまった事のある人にはよくわかるでしょう?
ただし、今作惜しむらくは、個々の視点から一つの事件を描くという形式を最後まで貫き通せなかった事。やはり最後は事件を起こした黒幕の視点からにして、それまでのすべてをひっくり返す、という作りになっていないと。そうだったら大傑作だったのだが。。後半のカーチェイスは迫力はあったのだけど、今作に限って言えば前半で作り上げた緊張感を損ねる効果しかなかったように思う。
どうでもいいが、フォレスト・ウィッテーカーがノシノシ走って事件を追っかけるシーンになぜだかわからないが涙が出てきた。あの体を使ったゆえの説得力ということだろうか。
御裁断は(最高☆5つ)
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