エスケープ・フロム・L.A.
えーっと、あたしは映画鑑賞年度の区切りを12月1日からにしています。正月映画の区分をややこしくしないための方策です。で、今日は12月1日、1997年度の始まり、映画の日です。まさか1997年(信じられんよなあ。年をとったはずだ。しかし、昔思っていたほどに世の中は悪くなっていないなあ)度の頭に「ロスアンゼルス2013」を見るとはなんという歴史の皮肉でしょうか。と、前置きはこの辺にして、
ちょっと、今日はベタ褒めにさせてもらいますよ(悪口に聞こえるところがあったらそこは誤解です。今日は一点の曇りもなく褒めます)。あたしゃアクション映画食いを自他共に認めるところですが、本当のことを言うとアクション系の映画でお腹の底から満足することってあんまりないんですよね。大抵いい評価をしてしまう映画はアクションの皮をかぶったラブストーリーとか人情話なんです。しかし、今日は違うよ。純粋アクション映画でこんなに興奮したのは久しぶり。なんせ、この映画の構造で重要な部分は最後の10分間ほどです。それまでのシーンは商業映画としての体裁を整えるための時間稼ぎです。ストーリーなんかはっきりいって無い!!しかし、これがいいんだなあ。アイデア満載、サービス精神バンバンの、作り手が楽しんでいるのがビンビン伝わってくる密度の濃い1時間30分。サーフィンはあたしゃもう拍手喝采。ブルースキャンベルなんかサムライミ作品以外で初めて見たと思ったらあの役だもんなあ。笑かしてくれるよなあ。
映画はうたかたの夢。お手軽に異世界体験ができるというのは娯楽としての映画の最も重要な要件でしょう。この映画はその点では満点をあげられます。見事に本編部分と融合した自己主張の全然ないCGを大量に投入しているのがその秘訣のようです。これまで色々な未来像がありましたよね。例えば「ロボコップ」もそうでしょうし、「ジャッジドレッド」もあります。が、これらは「ブレードランナー」の系列にあるもので、本作とは似たようで非なる世界観だと思います。決定的に違うのは本作が完全に文明否定の立場にあって、野蛮なLAを「喜び」の感情(もしくはイメージ)で包んで描いていることです。そこはかとないユーモアや優しい感情が感じられます。それが、あんなひどい世界なのに、見ていてそんなに嫌な気持ちがしないゆえんでしょう。「ブレラン」系では野蛮なものはただの野蛮、暴力はただの暴力で、文明とは対立する忌むべきものなので、その描写は悲惨です。
ジョンカーペンターの作品は評論したくなるところがいっぱいありますね。この人本当のリベラルで、本物のペシミストなんですね。本作なんかほとんど反米映画だぞ。よくハリウッドで商業映画作らせてくれるなあ。さて、本作を含めて彼の作品では何度も何度も世界規模の危機が起こります(でも、映画自体はB級だから舞台自体はもっと局地的です。「光る目」とか「物体X」みたいにね)。そのうち何回かで彼は世界を破壊しちゃうんですよね。きっと世界一たくさん世界を滅ぼした男だぞ。でも、これでも我慢してるんだろうな。本当はすべての映画で世界を滅ぼしたがってるんだぞ、奴は。まあ、そこがかわいいところなんだよなあ。オイラ大好きさ。
それにしてもついに阪神大震災を映像作りのヒントにした映画が出てきたか。ビルが座屈するんだもんなあ。
御裁断は(最高☆5つ)
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