フィフスエレメント
言うまでもなく、リュックベッソンはフランス人でして、ヨーロッパ系の人が作るハリウッド映画というのは、やはりそれなりの氏素性を垣間見せてくれます。おなじみのシチュエーションを撮っていても、どこか複雑なひねくれ方をしています。本作は一応、地球の運命を決める善と悪の究極の戦いを左右するフィフスエレメントを巡る争奪戦なのですから、骨格はアクション映画のはずです。しかし、それにしても、それをスラップスティック風のユーモアで味付けするとは、驚きというか、フランス人だからできたというか。
まあ、そんなわけですからアクションの権化とも言うべきブルースウィリスは完全なミスキャストでした(おや?でも、彼はコメディアン出身だったはず)。彼が出て来るたびに「あ、いかんいかん。これはハリウッドアクション映画なんだ」と思って、違和感が呼び起こされるのです。それから名優イアンホルムにしても哀れな感じ。気絶したシーンなどはもうトホホです。わたしゃ、彼が現れるたびに「やめてくれー!」と叫びそうになりました。好きでやってるのかなあ?それから創造と破壊の関係や愛がどうのこうのという御託なんか、お話とはどうでもいいわけで、そういう意味ではハリウッドの流儀の強さを改めて認識したわけです。
映画としては破綻していたわけですが、見るべきところがないかというと、実はとんでもないわけで、なんといっても、あのメビウスの美術を大きなスクリーンで見ることができるというのは無上の体験です。カブトガニに蚊の顔を付けたような宇宙人やアパートの部屋とかを見ていると、ストーリーなんてどうでもいいんだって思います。だから、実は僕、この映画結構好きです。かわいい。きっとベッソン君は作ってて楽しくってしょうがなかったに違いない。それにしても楽園についたらハワイアンってのはださいぞ。
ところで、劇場はデート遣いのお洒落系カップルがめじろ押しでした。普通に考えたら映画を年に何本かしか見ない人がデートで見る映画じゃないのはわかりそうなもんですが、これが、ベッソンブランドの威力というものでしょう。でも、みんな盛大に肩をすかされたわけですね。僕はこっちがベッソンの本性だと信じます。だって、「最後の戦い」や「サブウェイ」を撮った人なんだよ。
御裁断は(最高☆5つ)
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