ファースト・コンタクト
ニュージェネレーションの映画って前のも今回のも面白いなあ。ちゃんとエンターテイメントな映画になってるもんなあ。オリジナルストーリーの映画版は出演者たちが爺さん揃いだったこともあってトレッキーの懐古趣味に訴える部分が大で、その分映画としての質を損なっていたと思うのね。ストーリーは宇宙の危機の癖に実態はカーク以下エンタープライズクルーの銀河漫遊記(仲良し爺さんたちのもたれあい会話を主とする)になっちゃってて緊迫感のかけらもない作品が、特に後半目だってたもんなあ。それから、やっぱウィリアムシャトナーに比べるとパトリックスチュワートの方がずっとうまい俳優さんだってことが大きいのかな。本作はドラマの部分がしっかりしているという印象を受けました。最近では貴重な正統派宇宙映画ですので是非この調子で続いていって欲しいものです。
まあ、もちろんエンタープライズ内のストーリーと地上でのストーリーがまったく絡まないという珍しい構成に文句を付けるのも可ですが、僕にはここの配分は感じよかったです。優性戦争後の地球の人々のファッションセンスの悪さは御愛嬌。いまさらロックンロールでもないでしょうに。まあ、典型的アメリカ人のセンスったらこんなもんかも。それにしてもファーストコンタクトのシーンは感動させられたりしました。やっぱり僕もトレッキー。
それにしてもボーグです。西洋の人たちの集団主義、反個人主義への恐怖感嫌悪感(これは特にナチスへの反動として、第二次大戦後、社会の意識として自己強化されてきた結果のようにも思うが。本当は西洋に本質的なものではないのかもしれないと最近思う)といえばいまさら指摘するまでもないわけで、この手の敵は例えば、エイリアンやガメラ2の敵のレギオン、それから今度作られる「宇宙の戦士」の敵の蜘蛛型異星人など枚挙にいとまがありません(ひょっとしたらカミカゼやベトコンもこの類かも)。こういうものの自然界におけるモデルは、アリ、ハチ、シロアリ等の社会性昆虫です。ボーグはその中でも最も社会性昆虫的でしょう(恥ずかしながら本職でアリの研究をしているわたくしです)。エイリアンにしてもあいつら一匹一匹が強くって、しかも凶暴であるという個性もあって個体の重要性は損なわれていないわけ。それにくらべるとボーグは個体なんてどうでもいいの。よわっちいし。しかも、あいつらってば人間に敵意を向けることさえしないし、個体レベルでは意思さえ見られない。こいつらったら個人主義の最大の敵なのよ。
でもね、結局それはボーグの一人一人を個体と見てしまう人間側の認識に問題があるわけね。ボーグクイーンも言うように、ボーグは全体で個なんだし、個は全体なんだもん。いったいそれの何が悪い!
御裁断は(最高☆5つ)
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