スピード2
前作の面白さは一体なんだったかというと、バスを止められない設定を作ってとにかく疾走させるその快感だったと思います。エレベーターのシーンと地下鉄のシーンと3つの見せ場があったにもかかわらず、前作がバスの映画として記憶に残るものになったのは映画が基本的に「動く」絵であるからなのでしょう。で、今作は止まらない乗り物を豪華客船にしたわけですが、やっぱり船というのは重たいもので、疾走という感じではありません。のったりのったりですね。それに海の上だと動きを比較するものがないので、ますますスピード感が表現しにくかったようです。
この作品には今のような構造的問題があるのですが、それ以上に問題なのはシナリオのまずさです。アクション映画で最初に主人公に挨拶代わりのアクションシーンを持ってくるのはよくある手法ですが、それが本筋と全く関係ないと、えてして観客はしらけるものです(007とか、みんなおなじみのヒーローはそういうことも許されますが)。前作ではちゃんと最初のエレベーターのシーンが伏線になっていました。
まあ、これくらいは御愛嬌としても、船に乗ってからいろいろ危機が起こるのですが、広い船の中でのこと、その起こり方が空間的にもプロット的にもひどく散漫なのです(これは事件を解決する役まわりの主人公が二人いることも原因なので構造的なものともいえるが)。不必要な危機が、ただ主人公を困らせるためだけに起こります。また前作と比べるのですが、前作の危機は基本的にただ一つだったわけです。どうやってバスを止めるか?(もしくは走り続けさせるか)だったわけで、数多くの小さな危機はドラマ的に必然だったわけです。今作では救命ボートが落ちようが、取り残されたお客を助けようが、大筋とは関係ありません。
で、なんでこんなことになったか愚考してみました。ヤンちゃんの前作は「ツイスター」でした。あれはパニック映画ブーム再来の火付け役でしたね。そうです。実はスピード2はアクション映画ではなくていつの間にかパニック災害映画になっていたのでした!!そうして思えば、ラスト近くの船が衝突するだのしないだののスペクタクル(ただ、だらだらした破壊シーン)の意味もわかってこようというものです。ね、だからストーリーが散漫になっても、お客さんの個性を一人一人描いておいて助けてやらなきゃいけなかったんですよ。そう思えば疑問がすべて氷解するでしょ?理解できましたね?
理解できたからって、入場料が返ってくるわけじゃないんだけどね。
御裁断は(最高☆5つ)
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