シティ・オブ・エンジェル
だるい。あたしゃ、「ベルリン天使の詩」は超駄作だと常々思っていたわけです。で、それはヴェンダースがアホだからと思っていたのです。しかし、違いました。今作は、そもそもあの映画の骨となる企画自体に力がないということを証明しています。で、ハリウッドは力のない企画をなんとかして一本の作品にするために、もったいぶった映像、どうでもいいプロット、大仰な音楽、無理やりのエンディングをぶち込んだのでした。もう、ドトールのコーヒーを5倍くらいに薄めたように、引き伸ばされた間の抜けた映画でした。いや、だからといってヴェンダースは賢いわけではなくって、やっぱり鼻持ちならない野郎なんですけど。
それにしても、あまりの映画作りの安易さにはへどが出ます。そもそもメグライアンの描きかたからして紋切り型。渋滞の車の中を自転車で軽快に駆け抜けていく女医さんなんて、彼女のキャラクターとして何の驚きもない。それから、ラスト。ああしておけば感動するだろうなんて、客をなめてるとしか思えない。まあ、確かに感動する女の子達はいるんだろうけどさ。細かいところにも無茶なところがいっぱいあるし。例えば、メグライアンは、写真に写らないってだけで人の手をナイフで切り裂くんですよ。しかも、彼女は天使を堕すために恋の駆け引きとでも言うべき罠を仕掛けるわけです。そんなストーリーが純な恋愛感情がテーマのこの映画にそぐうはずもありません。そもそも天使は人の心が読めるんとちゃうんか!
文句はまだまだあるぞ。メグライアンの彼氏と、小児科医なんて出てくる必要まったく無し。それに天使が黒い服着て砂浜にたむろったり、高いところに座ってたりするのは、まんまカラスの群れ。さーいてい。ニコラスケイジも堕ちてからはいいけど、天使の時は死んだような演技で、まあ、それは「いろいろあるから素晴らしい人生さ」というテーマともからんでくるから仕方ないのかもしれないけど。でも、ハリウッド的観点から言えば、観客が感情移入すべき対象はニコラスケイジなんですよ。なのに、あんなふうに描いてしまえば、人間として共感できないではないですか。
まあ、いいけど。それでも「ベルリン」よりはましだから。
御裁断は(最高☆5つ)