コップランド
宣伝のポスターには「スタローンとデ・ニーロの対決!」とありますが、それはウソです。デ・ニーロの役まわりはそれほど重要なものでもありませんし、今回の演技も強烈な印象というわけでもありませんでした。無難にこなしているというところでしょうか。それより、デ・ニーロとハーベイカイテルの組み合わせって懐かしいなあと僕は思ってしまいました。
最近のスタローンは本当にこなれてきました。自分の分をわきまえて堅い仕事を続けています。で、今回は警官の街コップランドで周りの警官達にコンプレックスと屈折をいつも感じている保安官役です。彼は、うつむき加減で時々上目遣いに相手を見るというやり方で、その性格を見事に演じます。ハーベイカイテルはもちろん、レイリオッタまでピリピリとした演技合戦で見事に緊張感を維持し続けます。そして、最後の対決シーン。なんといって見どころはここです。ハリウッドで対決シーンをあのように処理することを決断できたのはすごいことです。さすが、サンダンスインスティチュートが絡んでいるだけのことはあります。
スタローンは片耳が聞こえないという設定なのですが、この設定は作品の中で重要な機能を二つ果たしています。一つはスタローンの不器用さと関係しています。彼は昔、川に落ちた車から女性を助け出し、その時に聴力を失ったのですが、彼はその時の女性に恋をしながら、結局他の警官に彼女を奪われたという設定になっているわけです。ここのところから、スタローンが最終的に立ち上がるまでの関係の煮詰め方が少し雑な感じがして、少しもったいない感じはしました。しかし、このプロットがもう一つの機能として、最後の対決シーンの処理を必然にしているわけで、これぞ脚本の勝利と言う感じです。ストーリーテリングの妙でした。
素晴らしい出来栄えの映画だと思います。
御裁断は(最高☆5つ)
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