CURE / CURE
サイコサスペンスです。萩原聖人が人の隠された暴力を暴き殺人を犯させる悪の伝道師、役所広司がそれを追う刑事の役です。萩原はサイコ演技をやるのですが、マークスの山とイメージが重なります。人の不快感を刺激してくる演出や効果音の使い方、刑事が追い込まれて最終的には悪の側に落ちるストーリーラインなどはセブンを彷彿させます。セブンと決定的に違う点は、セブンでは暴力は結局のところ大罪であり、悪に落ちるブラピは最終的に社会から落後してしまう一方で、今作では暴力は癒し(CURE / CURE)であり、役所広司は食欲もおう盛に街に住み続けるわけです。
そういう意味で考えると、この映画を恐怖の映画と捉えることが正鵠を得ているのかどうか、少し疑問です。今回一緒に見ていたお嬢さんはしきりに「怖かった」を連発していましたが、僕には「人とはそんなもんだろう、それよりだからどうしたいのかを語ってくれ」という感想が残りました。人の悪を暴くことがそれのみでテーマになるためには、人の善が信じられていなければなりません。しかし、それは、決して「今」ではないような気がします。それは70年代の病理だったのではないでしょうか?
そうではないのかもしれません。ここのところのバタフライナイフの事件を見ていると、病理はますます深刻になっているのかもしれません。でも、その解決はCURE / CUREではない。そう思います。
空で回る洗濯機の効果は指摘しておくべき収穫でしょう。逆に美術関係には少し不満です。病院のシーンなど、少し現実離れしています。芸術の側によらずに普遍を目指して欲しかったと思います。最後に疑問が一つ。どうして、バスのシーンはわざわざ特撮までして空を飛んでいるような効果を出さなければならなかったのでしょう。だれか、教えてください。
御裁断は(最高☆5つ)
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