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ジョンウーのガン・ダンス健在と言う映画でした。いや、ガン・カンフーかな。とにかく、物陰から物陰に移るときに不必要にくるっと一回転して、そのときも手足を伸ばしてモーメントを最大にして回るんですから。カンフーで一番重要なのは角運動量ですからね。
僕はアクションシーンのスローモーション処理には否定的です。例えばレニーハーリンのアクションシーンを考えてみてください。下品でしょう?しかし、ジョンウーは別です。彼のアクションは美しいので、スローモーションでも一向に嫌みではありません。むしろゆっくりと見せてもらったほうがよいくらいです。彼はアクション映画を荘厳に仕上げてくれるので僕はとても好んでいるのですが、今作では銃撃戦の中のオーバーザレインボーが印象的でした。感覚的にはコップランドとも共通する部分があるのかもしれません。
ところで、善と悪は同じコインの裏と表。このテーマはタイトルから印象的に表現されています。トロイになったアーチャーは、自分の中の悪を少し開放しますし、アーチャーになったトロイは文明的に振る舞います。それから、鏡の中の自分を撃つシーン。ここも印象的です。ところが、トラボルタをあからさまにキリストと重ねていく後半はいったいどういうことなのでしょう。キリストといえば、西洋世界では純粋なる善の象徴ではないのでしょうか?そうだとしたら、この処理はテーマと一貫しないように思えます。それともジョンウーはキリストと言えどコインの表に過ぎないといいたかったのでしょうか?もしそうだとしても、きっとそのことはほとんど伝わらないのじゃないでしょうか?まあ、伝わったとしたらもっと大騒ぎになっていたかもしれませんが。
御裁断は(最高☆5つ)
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