追跡者
巻き込まれ型映画で続編を作るのは難しい。それは、巻き込まれた主人公のナイーブな感情と不安定さが、観客を引き付ける作品の背骨になっているからこそ、巻き込まれ型映画なのですから。もし、同じ主人公を再び何かに巻き込ませたとしても、また同じ一日の繰り返しになります。見ているほうだって、そう思ってみてしまいます(ダイハード2を想像しますか?スピード2を想像しますか?)。そもそも、普通の人がそうそう何かに巻き込まれるわけでもないでしょうし。
ですから、ハリソンフォードの「逃亡者」の続編を、前作では追っかけるほうの(つまりは主人公と敵対する役回りの)トミーリージョーンズを主役にして作ると聞いたときは、やられたと思いました。それなら、同じようなストーリー展開がおきても不思議ではない!なにせ、主人公は追跡を生業にしているのですから。
しかし、見てみるとやっぱり無理がありました。なにせ、追う側追われる側どちらも正義なのですから。両者の対決にも緊迫感がありません。それに、この構造のお陰で、本当の黒幕がなかなか表に現れてこないので、見ているほうとしてはなんか肝心なところが抜けている感じなのです。早く、誤解に気づいて協力しろよ、お前ら!って思うのです。誤解がとけるまでは、主人公であるはずのトミーリージョーンズは基本的には間抜けであり続けなければならないのです。そこを逆手にとって主人公のキャラクター造形を行なってはいるのですが、やっぱりそれだけでは、このどうしようもない構造的な問題を補うことはできませんでした。やっぱ、企画が間違ってたんだわ。
でも、このような企画上のハンディを背負いつつも出来上がった映画はとても面白いものでした。監督アンドリューデービスはやはりなかなかの手だれですなあ。ひょっとしたら、演出面だけで言えば「逃亡者」よりも面白いかも。今回無実の罪を着せられて逃げるのが僕のお気に入りのウェズリースナイプスだってこともあるかもしれませんけどね。彼はハリソン君みたいに深刻そうな顔もしないし、アクションもできるから画面作りが派手にできるしね。欲を言えば、もっと、彼を前面に押し出して欲しかったな。
それにしても、ロバートダウニーJr.ははまり役だわ。
御裁断は(最高☆5つ)
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