ブレイド
いやー、なかなかの珍品ですぞ。アメコミの映画化だそうなので、どうしても構成の甘さを想像させますが、これがどっこいよい出来で。ウェズリースナイプス主演だからアクションシーンは最高の切れ味だし(いつか、リーリンチェイと対決しないかしら)、音楽もクールに決めて、特撮もかっこいい。それから、重要な点ですが、物語の構造がしっかりしている。ウェズリーちゃん演じるところのブレイドもクリスクリストファーソン演じるところのウィスラーも異形のものだが、このヴァンパイアハンターのチームに巻き込まれた女性を加えることで、我々普通の人間からの視点をうまく取り込んでいます。ここはアイデアですね。これがなければ、ただのマンガ、スクリーンでは大騒ぎだけど、お客はどこか白けて見ているだけだったことでしょう。
で、何が珍品だったかというと、いちばんのポイントは、あふれんばかりの日本趣味。ブレイドの秘密基地には仏壇があって、瞑想してるし、彼岸花とか生けてあるし、彼の使う刀のつかは、もろ日本刀だし(でも、チャンバラになると手首だけをつかったフェンシングの要素がどうしても取れないのね。残念)、途中で日本語ラップバンドのステージのシーンがあったり、あげくエンドタイトルに流れる曲には日本語のせりふがあったりして。見る人が見れば国辱物ですぞ。そういえば、燃えよドラゴンみたいなシーンもあって、きっと作り手はブルース・リーを日本人だと思っているに違いない。
この映画の監督はなかなか手だれでしょう。オープニングの血のシャワーから続くブレイドの大活躍シーンと中盤の地下鉄での戦い。圧倒的なテンションでぐいぐい引っ張ります。ものすごく細かいカットの積み重ねで、何が起こっているのかわかりにくいのは最近の傾向ですから、まあ、それはいいでしょう。アクションシーン以外でもサブリミナル的に挿入される細かいカットの多用も特徴的です。それから、街の描写にハリウッドっぽさがなくて好感しました。こんな脳天気な映画の癖に、とても寒々しい描写なのです。こういうところが全体のトーンを引き締めてくれているのでしょう。スローモーションと早回しも大胆に使っていましたね。
あと言っておかなければならないのは、吸血鬼映画としてオーソドックスだったことです。人間社会に溶け込んでひっそりくらしている吸血鬼と、それを知り退治に走る人間と吸血鬼の合いの子という設定は寄生獣を想像させます。それでも、ちゃんと吸血鬼は邪悪の象徴ですし、吸血行為が性行為のメタファーであるというお約束もしっかり描いている。このあたりは吸血鬼をゾンビの一種として描いてしまった「ヴァンパイア最後の聖戦」の失敗は回避できています。で、吸血鬼はもともと映画としてポテンシャルの高い題材だということを証明してくれたわけです。
それにしても、ウェズリーちゃんがサングラスをかけていて、これはコミックのキャラクターなんですかね。まあ、彼の目は情けないところがあって、半聖半邪のブレイドをやるには隠しておいたほうがよいわけですが、どうしても鈴木雅之に見えちゃうんだよねえ。
御裁断は(最高☆5つ)
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