ラ・ジュテ
やっぱり、ハリウッド映画がいかに偉大であるかがわかります。こちらもこちらでとても面白いのだけど、失われる既知の未来へのノスタルジアというテーマは、12モンキーズの方がより情感に訴える形で描けているように思える。
ワンカットを除いてすべてが静止画像の積み重ねで出来ているこの作品、動きのシーンはゼロなのだけど、極めてムービングピクチャーなのです。考えてみたら、普通我々が映画と考えているものにしたって、パラパラマンガなのだから高級な紙芝居と同じなわけで、ラ・ジュテとほとんど変わりません。少し一コマあたりの時間の流れ方が違うだけで。いかに映画というものが編集であるかがわかります。この映画はワンカットが静止しているせいで、そこに含まれる情報量が小さく、逆に言うとカットの抽象性が高いわけです。つまり、編集の重要性がより純化した形で存在しているということになります。極端な見方をすれば、これこそが映画であるわけです。
この映画と12モンキーズの決定的な違いは子供の視点です。12モンキーズは子供をちゃんと描いているので、ブルースウィリスの強い憧れが強調されています。しかし、ラ・ジュテでは子供の視点が描かれていないので、主人公のヒロインに対する思いが普通のものにしか見えません。これが、せっかくの微妙な感情設定を伝わりにくくしているのではないでしょうか。
御裁断は(最高☆5つ)