恋におちたシェークスピア
学者というものは、自分の研究成果を論文にすることが義務のようなものです。もちろん、朝が来たことを表現するために、ナイチンゲールを引き合いに出すことは、学者にはできませんが、「朝が来た」と言わずに「太陽が現在5度4分の高度にある」と表現するくらいの自由はあるわけです。そう言う意味で、不肖わたくしも物書きの端くれでありまして、スランプがあるんですよ、これが。最近は、一日かけて二行書いては一行削りという状態で。ああ、僕にも新しいミューズ様があらわれないかしら。
いや、それにしても一分の隙もない作品でした。今年のアカデミー賞は高水準ですな。はっきりいって作品賞を取った時代物でしょ。しかもシェークスピア。退屈を覚悟の上だったんですけれども、うれしい誤算でした。「よい芸術を作ることは、それ自体喜びである」というテーマ(薬屋にふんすることになる金貸しに象徴される)を本作のようなエンターテイメントに埋め込んで呈示してしまう。メッセージと技法との見事な調和であることよ。この作品も、下の作品とは別の意味で「ライフイズビューティフル」と語っているのですよ。人の情熱のこもったよい芸術の元では、人はみな幸福である。ああ、愚直なまでのオプチミズム(決して総理ではない)。損はしないから絶対見るべし。ただし、普通の意味では感動したりはしないから、そのつもりで。
ところで、僕は「グィネスパルトロウは断然ショートカット」派であることをここに宣言します。
御裁断は(最高☆5つ)
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