シックス・センス
自分の見ているものをどうやって人に伝えればよいのでしょう?僕は両目が2.0の視力を持っているのですが、こいつは、なかなか便利です。なんといっても、街を歩いていて、美人なお姉さんを遠くから発見できる。嫌いな人も向こうが気づく前にこっちが気づくから、さっさと逃げ出すことができる。いいでしょ?
ところで、僕が研究しているアリさんで、女王アリと働きアリをどうやって見分けるかというと、胸にある埃粒のような小さな器官の有無を使います。普通はこれは顕微鏡でないと見えないんですが、おお大自然の不思議、あたしゃ肉眼でも見分けられるんです。で、他のアリ研究者と一緒に採集に行ったりすると、僕だけが、「ほら、こいつが女王ですよ」なんてことができるんです。僕は「どうしてこの人には見えないんだろう?」と思うし、相手は「なんで、こいつは見えるねんな?」と思っています。どうやっても、このギャップは埋まらない。結局、完全には人に伝えられないという凡庸な結論に落ちていくのです。
コミュニケーションの問題といえば、やっぱり男女関係につきます。「ああ、女性というものはどうしてあんなにも手のひらを返すように冷たくなれるんだろう。僕は彼女の見ていたものを何にも見ていなかったんじゃないだろうか?」なんて思うこともしばしばです。
このような問題に、この映画はある意味で希望的な解決を与えてくれます。また、この映画は心に傷を負った人間の回復を描く映画でもあります。ブルースウィリスは出ていますが、アクションはまったくありません。いつも思いますが、ブルースウィリスは受け身のキャラクターになったほうが生きる俳優ですね。ストーリーを転がす側ではない。少年の演技もうまかったですなあ。ほとんど二人芝居に近い映画だった。
それにしても、こういう静かな落ちついた映画をブルースウィリス主演で作れるんだなあ。ハリウッドおそるべし。でも、ヤンデボンみたいのもいるんだよなあ、ハリウッドって。
御裁断は(最高☆5つ)
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