ブレア・ウィッチ・プロジェクト
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この映画はこういうことと全く対極の位置にあります。完全な一人称映画であるこの作品では、観客は神の立場から登場人物の地平に引きずり下ろされています。この映画の新しさはそういう形式でホラー映画を作ってしまったことなのでしょう。僕はインターネットによるあのあざとい宣伝戦略は嫌いですが、おそらく世界初だろう一人称ホラーは評価します。この映画を似非ドキュメンタリーだと定義するのは少し外れているように思います。そもそもドキュメンタリーという形式が真実だと考えること自体が前千年紀的です。それにしても輝くべき2000年紀の最初に見る映画にこれを選んでしまったなんてなあ。
ストーリーは、道を探して歩くシーン(噂には聞いていたが、ハンディカメラなので手ぶれがひどい。わざわざ劇場の最後列に陣取ったのに、ほんとうに酔ってしまう。僕は乗り物に弱いのだ。作品の中頃からは歩くシーンになるとスクリーンから目を背けていた)、疲れて立ち止まり三人が互いの責任をののしりあうシーン、まわりの物音に恐怖する夜のシーンの繰り返ししかありません。もっと削って45分くらいにまとめてくれていたら、気持ち悪くならなかったのに。
一方で、この映画では政治も描かれています。プロジェクトを推進するものと雇われるものとの精神的暗闘、緊張と融和の繰り返しにプロジェクトの構成員は疲弊し、その最も脆弱な所から生じる急激な崩壊はとてもリアルです。それにしても、プロジェクトの長が野心家で、なおかつヒステリックだとたまらないよなあ。
そんなわけなので、この映画は観客に非常な苦痛を強います。正月おとそ気分で見る映画ではありません。それに、ラストシーンを見てしまうと、ひょっとしたら夜一人になれなくなるかもしれないから。
御裁断は(最高☆5つ)