ジョンQ ー最後の決断
「トレーニング・デイ」のあのデンゼルちゃんはどこへ行ったの?
今作は息子が心臓の病で移植手術を受けないと余命幾ばくもないというのに、保険制度の不備で手術費を用立てることができずに病院に冷たくあしらわれ、困った父が病院に人質を取って立てこもる話。「狼たちの午後」のような反権力性を想像して劇場に足を運んだ私が悪かった。これはデンゼルちゃん主演の映画だったのだ。熱く正しい男、復活です。途中から設定の面白みが失われ、逆にどんどん子を思う父の愛というテーマが、デンゼルちゃんの熱さによって突出してきます。どうなることかと思っていたら、最後はご都合主義の極みでオチとなります。監督さんも、さすがにこのオチはまずいと思ったのか、そこにつながるプロットを可能な限り早いうちから提示しているわけですが、それで謗りを免れられるかというとさにあらず。
やっぱりこの話を、親子の強い愛に感動!なんてノリでまとめられてしまうとなんだかなあと思います。かの国の医療保険制度が弱者に厳しいらしいというのは、新聞で読んでなんとなく知ってはいましたが、この映画のようなことが本当に起こりうるのだとしたら、その制度は不備があるとしか言いようがない。だから、その不備をもっと強く指摘するべきで、この作品のような処理は単なる目くらましに見えてしまいます。
ところで、年金や高齢者医療はなくなってしまってもしかたないような気がしますが、助けられる若年者を助けるのは社会の責務じゃないんでしょうか。死に行く者は生まれ来るものに道を譲るべきだというのは、この世の真実だと思うのですがどうでしょう?
費用のことばっかり考えている病院理事長の不感症女に、これぞはまり役のアン・ヘシュ。デンゼルちゃんと対峙する昔かたぎの警部にロバート・デュバル。場をさらうにはちょっと年を取りすぎている感あり。その上司で「ハンニバル」のときと良く似たキャラクターのレイ・リオッタ。そして担当の心臓外科医にジェームズ・ウッズ。もう、きっとこいつが悪辣な医者に違いないと思ってみていたら、そうでもなくて拍子抜け。おいしいところをさらっていた。
ところで、私ならこの映画のオチはこうする、というのを思いついたのでお暇ならちょっと読んでつかあさい(多少ネタばれの感ありなので
別ページ
にしておきます)
どうでもいいが、子供を持つというのは、ある意味で長期間にわたって人質を取られているようなものなのだなあ。どんなに幸せに暮らしていても、この映画のようなことが明日起こるかもしれないっていう不安を感じるのが、親ってものなのかなあ。これもどうでもいいことだが、世の親は「お前も親になれば私の気持ちがわかる」ということをよく言うわけだが、実際に親になるまでその気持ちがわからないのは幸いである。こういうのがあらかじめわかっていたら、その不安がいやで子供を持たない選択をする人たちが増えるに違いないことだ。
御裁断は(最高☆5つ)
2003年に見た映画へ
一覧へ